桃の蕾が、咲き始めた。幾重にも重なる花びらが、ゆらりと柔らかく開き始めた。
今日は向かいの店で工事があって、ブルーシートを広げて狭い通りに粉塵が飛び交っていたから、お客さんが入りづらいだろうなと感じてしまって、朝からむしゃくしゃしていた。店のドア前だったから、もうちょい配慮してくれてもいいんじゃないか?とふと神棚を見上げると、
「許しなさい。」
と声が聞こえた気がした。
「つべこべ言わずに、仕込みなさい。グラタン、ミニチーズ、ホールチーズ、仕込みなさい。足りてないでしょ。」
と次に言われた気がした。えらい具体的に言ってくれる神様だな。
そんな1日だから、その粉塵の中を桃が咲いてくれたことが特に嬉しく有難く思えた。いろんな1日があっていいんだ。