アルツハイマーが進んで施設に入っているばあちゃんが、薬を多く飲まされていたことがわかった。それを見つけた母は、婆ちゃんのことを思って眠れない夜を過ごしている。爺ちゃんのことが心配になって電話したら、ワシは大丈夫や、と言うけど、少し体調を崩している。
仕方ない。施設側にどんな事情があるか知らないけど、介護を任せたのは僕らなんだ。母は婆ちゃんの施設を変えようと前向きに動き出した。
婆ちゃんにもう一度ランチを食べてもらいたいな。それはもう叶わんことだろうか。婆ちゃんが大好きな珈琲を淹れる仕事をしとるんだよ、なんてでき過ぎた話やね。
これでいいんだろうか。これでいいわけない。これでいいんだ。僕らは不安になりながら、それでも決めたことを信じてギリギリの日を紡いでいく。人間は長生きするようになった。もう自分はいつ死んでもいいように今を生きていたいと正直思う。「順番だけは違えたらあかんよ。」と背中をさすって言ってたいつかの母を思い出した。