ちょっと長く書いていいですか。うちのスコーン、よう売り切れるようになった。看板娘が精魂込めて作っとるからそりゃ美味しいやろう。毎日、「今日はいくつ仕込む?」と、それが僕らのもっぱらの話題になっとる。
ところで、具が半端ないのも特徴やと思う。チョコやクランベリーは、ゴロゴロに入っとる。どこを割いて食べても、必ずあたる。なんかこのゴロゴロが病みつきになる。出過ぎる杭は打たれない、という具合だろうか。
今日も2つ仕込んでた。プレーンとチョコ。1つの生地で6〜7個のスコーンがとれる。うちのオーブンでは、1度に最大で3つのスコーンが焼ける。毎朝、幾度もスコーンを焼いている。
焼きの温度は2度変わる。だから焼き作業も、手がかかる。タイマーがけたたましくなると、2階で掃除をしている手をとめて、階段をダダダダダーと降りてきてはスコーンの焼き加減を調整している。僕は彼女の階段の降りる音を聴いて、若々しいなぁー、部活みたいやなぁー、と感心している。いやいや、感心するとこ間違えとるね。
笑神様が棚の上にいて、いつも僕らを見守ってくれとる。売り切れても、もう焦らない。笑って、「今日はもうなくなっちゃったんです〜」って。それを言えるまでに時間かかったけど、それでいいんだと思う。無理やりに追いかけて作れるもんでもない。その日の限りを自分で決めていく。その自然な流れが大事なように思う。
ランチもそうだな。今日のランチもぜんぶ売り切れた。売り切れた後にお客さんがランチを求めて来ることもある。「あー、全部出ちゃったんですよ……、でも、あるものでやりますね。」たいがいそうやって意地でも作ってあげたくなる。850円という値段が彼や彼女らにとって大事なことを知っとるから。日々のことだから、できる限り節約したい。
焼うどんがようやくよく出るようになってきた。作らない日はないくらい。ミックスサンドは「焼きたまごなんや!」って驚くお客さんもいた。その驚きが食べると喜びに変わると嬉しいなといつも思う。焼きたまごもいいやん!みたいに。そんな瞬間、見たことないけど。
ゆっくりと、1つずつ積み重ねてきたものが、今になってる。戸惑いも葛藤も、全部含んで、今のそれになってる。その過程が、愛おしい。