2016年7月23日

グラス割り事件


あっという間の出来事だった。割れたグラスの破片が飛び散る寸前に、皮肉にもパシャーンと清々しい音がした。それが耳に残っとる。音に敏感で、音好きな自分を呪いたくなった。
グラスは粉々。それで終わらず、さらに心も粉々になるような事態を生んでいた。
スコーンを切り分けている横でグラスを割ってしまった。看板娘は仕込みかけていたその場にあるスコーンを全て破棄した。当然のことのように。「破片、飛んでへんできっと!なぁ、よく見たけど、ないで!」と、動揺して興奮ぎみの僕を「飛んでなくても、何かあってからじゃ困るから、念のためにやめとこう。」と、笑顔で言って黙らせた。ほんまに年下なん。ほんまにこんな店主ですんません。ほんまにごめん、ごめん、と何度も言うたけど、だんだん、ありがとう、て言いたくなった。
ありがとう看板娘。大事なことを気づかせてくれとる。ほんまごめんな。休み明けの日、クランベリースコーンが少ないのは、ほかでもなく店主のせいです。ポコポコたたいてやってください。レジ前にハリセンでも置いときたい気分です。