看板娘がスコーンを仕込むとき、必ず厨房にこのセットが置いてある。
これが、「しばらくしたら仕込みをするから騒がないで」とゆう僕への合図。いやいや、そんな。猿じゃないんやからそんな闇雲に騒いだりしませんよ。店主やで。
穏やかに始まるように感じるけど、たいてい彼女が仕込み始めるといたずらのようにお客さんが来てくれる。嬉しいやら忙しないやら。スコーンの神様のいたずらですな。
彼女曰く、「液体を混ぜている」らしい。聞きたいのは、その液体の中身なのに。
今日はクランベリースコーンのようです。いいねー眩しいくらいに赤いねー。酸っぱいんやろう。見とるだけで酸っぱいね。
前触れもなく、彼女のリズムで始まり、進む。からーんと音をたてて、
混ぜるポーズは必ずこんな感じ。あまりにばうむでお馴染みのポーズだから、たまにチーズケーキ作っとるのに真似してしまう。ははは。
スッ、スッ、スーッとゆう感じで、滑らかに混ぜてゆく。抵抗のない感じ。
こんな風に固まりになったら、
わぉ!クランベリー。大胆なんですね。
そしたらまたこのポーズで混ぜ始める。スッ、スッ、スーッとゆう具合。
できた固まり。クランベリーが中にゴロゴロ入っておる。
イヤー、何をするんだー、できたばかりの固まりをー、
ドンっと机上にのせちゃった。のせられたクランベリーの生地は看板娘に見据えられ、おとなしくしている。
アイスクリームみたいやな。
あーっ。
また混ぜられる。
伸ばされる。
あっとゆう間に、幾度かこねられ、
生地が完成。これを一晩冷やして寝かせる。
僕はアナウンサーを目指していなくてよかった。中継が歪すぎる。