いいことばかりなんて、あり得ない。そればかりをお客さんに見せていければいいってもんじゃない。それは嘘になる。汚いところも、強かなところも、弱いところも、不器用なところも、この店を作る一つになっていかなきゃ嘘になる。生きることは、それだけ善悪全体と良し悪し全体と関わっとる。店を営むことは、それと等しい。
早朝にぐちゃぐちゃにカラスに荒らされたゴミ箱や、トイレだけを利用して「別になんもいらんわ」と帰っていくお客さんも、誰かに止められて音のならないオーディオも、痛みが続く体も、明かりのつかない厨房の電気も、僕らを容易に凹ませるけれど、そこに個性いっぱいの息をふきこんで膨らませてくれるのは、いつものお客さんたちだ。「暗い顔すんな、私は今日こんなことあったで。」「GWは全部仕事入った。一緒にがんばろ。」そんなあからさまな会話はしないけど、そう言ってくれとる気がする。その幸せはなにものにも代えがたいし、儚くてすぐに見えなくなるから、目や心に焼き付けられる人間になりたいと思う。
感謝しています。いつもありがとうございます。僕らはまだまだ未熟ですが、日々を、一歩一歩を、大切にやってゆきたい。顔をあげて。