さつまいも茹でて、きれいな色になった。なんでも無闇に茹でればいいってもんじゃなかった。野菜は栄養が抜けると悪い色になる。好ましい茹で方をされると、いい色になる。これは人間も同じだろうか。
この仕事に出会う前の若い頃、野菜の茹で方なんて、ましてや野菜の色づき方なんて、考えることもなかった。人を好きになる分だけ嫌いにもなれて、そのことに一喜一憂するばかりで。今はさつまいもがいい色に茹でられただけで、嬉しくて幸せを感じる。
人は愛想で笑うことも、嘘をつくことも、ダメな人間だと自分で自分を責めていくこともできる。そんな自分が消えることはないし、大きな歯車にも抗えるもんじゃない。喫茶店を始めてこれが一生続くと信じているけど、いつだってささいなことでつぶれるかもしれない。だから、自分の目を育てたい。自分の心を育てていたい。そういったことはさつまいもの茹で方一つにもきっと通じとる。
ほんと熱苦しい話だ。