今日は年明け初営業。昨日も仕込みで店にはいた。昨日も開けてはいたんだよ、と。そんな店主の心をビンタするように、店を開けた途端のラブコール。
「おはよう。今日やっとるんやろ?ミニチーズケーキ20個、明日、いける?昨日も電話したんやけどな。いけるやろ。」
この流れで、いけません、て言えんやん。もちろん、いけますとも。寝ぼけ眼を吹っ飛ばして、それいけやれいけと尻をたたいてくれるのはやっぱり常連さん。
ランチをバタバタとなんとか終えて、少しすると旧友がれおくんを連れて来てくれた。話の流れで目玉焼きハンバーグおいしいでー。って言ったら、「ハンバーグは好きじゃない」と言う。何が好きなん。と聞くと、
「黒豆。」
この世に数ある食べ物の中で、最も黒豆が好きやなんて、もう、黒豆だって君のことが好きだと思うよ。ハンバーグとかオムライスとかエビフライとか、そんなことより、その個性を、どうぞ絶やさないように。
珈琲処ばうむ、と店の名前を書いた紙を片手に、不慣れな土地に来てくださったお客さんがいた。たまごサンドを食べて、香ばしいモカを飲んでくれた。お客さんにはお客さん一人一人の時の過ごし方がある。席を立つまでその時間は守られるべきだ。僕らはお客さんの息づかいだけを、どこかで感じている。帰りに美味しかったと三回も言ってくれた。三回言われるとさすがに涙腺にくる。泣き虫だって言われる。
なんとか1日が、終わらないことを次に含んで、終わったから、ホッとしていたら、コンビニでレジを終えた看板娘が声をあげた。
「なぁ!1,111円やってん!」
わぁ。すごいね。
いい日じゃないか。