2016年6月17日

店主の徒然日記

頭上に水がぶら下がる。自分の中にある、重たい性格がかたつむりのように顔をだしてしまう。こんな面倒な自分では、店にも申し訳ない。案の定、店は静まり返っている。やっぱりチーズケーキを作る。


いつからだろう、現実よりも心の中だけで会える人の方が多くなった。にぎりしめていられるほどこの手はそう大きくないことを知ってしまえる。大切なものほど手放してしまう厄介なところが僕にはある。


店でいろんなお客さんと出会って、なんとなくわかってきたことがある。皆なにかを背負ってる。降ろせば楽になるだろうその荷物を「降ろせ降ろせ」と周りは言う。でも降ろしたら僕が僕ではなくなるから降ろさない。長年背負う荷物はもう背中の一部になっていて、そのおかげでユニークにもなれている。苦労から得るものの方が身についていくのかもしれないし、歪なくらいがかっこいいじゃないか。この荷物ごと飛んでやる。身軽に美しくは飛べないけど、いつかこの荷物ごと飛んでやる。生きるなら、いっそ面白そうな方を選ぼう。


幸せは過ぎないようにできとる。にぎりしめたそばからこぼれだして消えてゆくように。今日みたいな曇りの側に立ってものを見ているほうが地に足着いた人間らしくはないだろうか。いつでも苦しいことの方から希望を見出してきたし、光を探すよりも自分が照らしだせる闇を探していることの方が多いのかもしれないから。